■生きた泥との対話が醸し出す、奄美泥染めの魅力
泥染めの独特の風合いは、シャリンバイという木を使った草木染めと泥を使った染色を繰り返すうちに生まれる。
その色は少しずつ定着していくため、黒い色を出すためには、草木で 20 回染め、泥で 1 回染めるという工程を 5 回、つまり約 100 回も染めなければならない。
しかも泥染めは、どこでも簡単にできるものではない。
「鉄を蘇らせる」と書く蘇鉄(ソテツ)が自生し、鉄分が程よく含まれた奄美大島の土でなければ、あの味わい深い色を引き出すことはできない。
最も泥染めに適した泥は、先祖代々受け継がれ、よく耕された田んぼの泥だという。
耕すことにより砂が丸くなり、泥が醸成されていく。
そうして生まれた滑らかな泥は、生地を傷つけることなく繊維の奥まで染められる。
「奄美大島の泥は生きている」。
季節によって染まり具合が異なるため、染色職人たちは日々泥や水、風と対話しながら染め方を調整している。
奄美大島の豊かな自然、そしてその自然とともに暮らし、伝統を守ってきた染色職人たちの技・想いが、泥染めならではの風合いを生み出している。
大量生産困難な、希少性ある泥染め藍木綿 今回の泥染め藍木綿では、笹倉玄照堂で染めた藍木綿をさらに泥で染めるている。 布を傷めずに深みのある色を出す方法などは、試行錯誤を重ねながら探っていった。
また、人の手で染める泥染めならではの苦労もある。
藍木綿の生地は水を吸うと非常に重たくなるため、人の手で染めるには 10m が限界となってしまう。
さらに泥や水、風など自然の力を借りて染めていくため、大量生産・計画的な生産が難しいのも現実だ。
しかし、この泥染め藍木綿の風合い・温もりは、一枚一枚人の手で染められたものだからこそ味わえる魅力だろう。
時を経て、風景を楽しめる泥染め藍木綿作務衣 時を経て少しずつ変化する藍に、さらに泥を重ねた泥染め藍木綿作務衣は、使えば使うほど藍と泥がそれぞれ表情を変え、さまざまな風景が表れてはまた別の風景へと移ろってゆく。
その移ろいゆく様は一点一点異なり、作務衣を着る人の癖なども表れてくるため、 5 年・ 10 年と経った頃には自分だけの泥染め藍木綿作務衣ができているだろう。